EC 店舗 融合
ECサイトと実店舗のポイントを融合するfutureshop omni-channel. 4.ショールーム用店舗. 井上 雅啓(ソニー・ミュージックコミュニケーションズ)、西村 則幸(スペースシャワーネットワーク) published by注目ワード: デジタルと店舗の融合清川 忠康(オーマイグラス代表取締役社長)メガネのECで成長を遂げ、近年は、直営店の展開に力を入れているオーマイグラス。清川忠康社長は、なぜ店舗が必要なのかを根本から問い直し、独自のオムニ戦略を推進。ショールーム的な機能を高めた店舗を展開し、事業の拡大を目指している。オーマイグラスは関西にも進出し、大阪では「梅田 蔦屋書店」に出店。2014年に1号店をオープンして以来、直営店を増やしており、2017年5月時点で9店舗を展開。今後2~3年で30~40店舗にすることを見込んでいる約1万点のメガネ・サングラスを取り揃えた、日本最大級のメガネのECサイトを運営するオーマイグラス。従来、メガネのECは難しいとされてきたが、オーマイグラスは5日間、最大5本までを返品無料で試着できるサービスなどを提供し、事業を拡大させてきた。そのオーマイグラスが、近年、直営店の展開に力を入れている。2014年、東京・渋谷に1号店をオープンしたのを皮切りに、首都圏での出店を増やし、大阪や広島にも進出。2017年5月時点で9店舗を運営している。店舗での売上げは伸びており、現在、店舗とECの売上比率は一対一だという。ECで成長を遂げてきたオーマイグラスが、なぜリアル店舗を拡大させているのか。清川忠康社長は、「2011年の創業当時、直営店に力を入れることは想定していなかった」という。「ECの市場は拡大していますが、創業して1~2年が経った頃、今後の行方に疑問を抱くようになりました。楽天やAmazonで買える商品を扱っているところは、激しい価格競争に巻き込まれていくでしょう。今、小売業が苦境にあるのは、売れ筋を分析したりして同じような商品を扱い、結局、どこも似たような品揃えになっているからです。そのため、店舗の価値が失われている。同じことがECでも起こり、環境は厳しくなっていくと考えました」清川社長によると、「物販」の再定義が求められている。モノを売るだけでは成長できず、今後は、モノと体験、さらにブランディングまでを含めて、「物販」の領域を広げていかないと難しい。そうした問題意識の下、オーマイグラスは直営店の展開を進めている。オーマイグラスは、メガネの一大生産地である福井県鯖江市の中小企業の協力を得て、自社ブランド商品の製造・販売を行っている。上流から下流までを手掛けるSPA(製造小売)として事業を強化しつつ、オムニチャネル(ECとリアルの融合)で販売を拡大している。「他店では買えない商品を充実させ、自分たちが良いと思える商品を、直接、自分たちが狙ったターゲット層に届ける。開発・製造・販売を自社で完結させることで、『体験』や『ブランド』をつくり出せるようになります。『オムニチャネルSPA』になることが今後の成長には不可欠であり、直営店の強化はその一環です」清川 忠康(オーマイグラス 代表取締役社長)会員の方はおすすめの記事一覧デジタルと店舗の融合 の記事一覧UDS 店舗は試着のみ、購入はオンラインというGUの次世代型店舗が11月にオープンします。こうしたECと実店舗を融合させる取り組みは、ZARAやAOKI、青山商事などの店舗でも行われています。実店舗でありながら店頭販売のない次世代型店舗が、11月にオープン予定です。この新店舗では、ウィメンズ、メンズのフルラインを展示しますが、すべて商品サンプルで販売の取り扱いはなし。従来の実店舗では当たり前だった、店頭販売はおこないません。消費者はオンラインで商品を注文後、配送で受け取ります。GUの次世代型店舗のあり方は、「品揃えをよくしたいけれど余剰在庫を抱えたら困る」という店舗のジレンマと、「通販は便利だが試着できないので購入に踏み切れないことがある」という消費者側のジレンマを解決する一つの手段です。店名 GU STYLE STUDIOGUとは別の次世代型店舗の事例を参考に、ECと実店舗の融合について考えてみたいと思います。ファストファッションブランドのZARA(ザラ)は、2018年5月~8月の期間限定で、ショールーム型のポップアップストアを六本木にオープンしていました。ウィメンズ、メンズ、キッズ&ベビーのフルラインナップをそろえ、13時までに注文をすれば同日の18時以降に店舗受け取りができるなど、スピーディな商品受け取りを特徴としていました。青山商事も、実店舗とECを融合させた取り組みで売上を伸ばしています。店頭にない商品はEC在庫で対応するという売り逃がしを防ぐシステムも、「デジタル・ラボ(通称デジラボ)」の売上好調の理由の一つです。スーツの販売を手がけるAOKI(アオキ)は、公式オンラインショップで売上が低下傾向にあったスーツの購入をうながすために、次のような2段階の接客施策をおこなっています。スーツは、ほかのファッションアイテムと比較すると試着できないことがネックになりやすい衣服ですが、2段階の情報提示によってこの弱点を解消しています。米国百貨店Nordstrom(ノードストローム)は、2017年10月から販売用の在庫を一切置かない「Nordstrom Local(ノードストローム・ローカル)」をオープンさせています。こうしたショールーミング、Webルーミングに共通しているのは、ECサイトと実店舗を競合関係にある、あるいはおまけのように付随的関係にあるとみる時代は終わりを告げそうだということです。さまざまな 小売×テクノロジーのText : 佐々木 将史 / Editor : 吹原紗矢佳 EC発の企業がいま、インターネットの世界にとどまらず、実店舗への展開を始めている。小売業においてECは、立地を考えずに顧客を呼び込める点、実店舗に比べて出店料や人件費などのコストを抑えられる点が大きなメリットだ。それにもかかわらず、なぜ非効率とも思える施策を進めるのか。国内のいくつかの事例を紹介しながら、小売の現場で起きている変化について考察し、オンラインとオフラインが融合していく先を探る。インターネットの普及と共に歩みを始めたEC。その現在のBtoC領域における国内市場は、店舗まで買い物に出向く手間を省け、豊富な商品ラインナップから選べるECの利便性は、顧客にとって大きな魅力だ。実店舗を運営する企業にとっても、ECは自らの「未来を脅かす存在」であると同時に、売上を裏で支える「新チャネル」として期待が持てる分野だ。経済産業省「急速な成長に目を奪われがちなEC市場だが、小売業全体で見ると決して大きくはない。物販系分野におけるEC化率(すべての商取引の内、ECが占める割合)は2017年で5.79%に留まり、消費者の多くはまだ「実店舗での購入」を主にしている。その理由は、キャッシュレス決済や受け取りの手間などが考えられる。だが、特にECから立ち上がった企業にとっては、大きな課題といえる要因が一つある。それは、商品を手にするまでの「体験」に乏しいことだ。選ぶ際に楽しく会話したり、買ったあとでワクワクしながら家路についたりする経験がECでは得にくい。ECでは商品の実物はもちろん、「顧客の顔」や「提供者の顔」も互いに見られず、せっかくの買い物が一人ひとりの記憶に残るような体験へと結びつきづらいのである。しかし、購買時のリアルな体験は、モノが溢れる現代で「指名買い」を呼び、ひいてはファンとなってもらうためにも重要だ。そうした背景から今、ECのみの販売から実店舗へと進出を狙う事業者が登場しつつある。国内で展開する事例を3つ紹介しよう。公式通販サイト『痩せている女性のためのメディア『実店舗への進出に際してハヤカワ氏は、6curry・公式サイトより2017年12月に立ち上がった『事業の中心は「サラダ感覚で食べる、カップカレー」の販売。創業当初は「UberEATS」専門店としてインターネット注文のみで商品を届け、メディアでも話題を集めた。その後、「UberEATSだけでは顧客の顔が見えない」ことへの違和感から、2018年8月に実店舗『6curryキッチン』を立ち上げるべく6curryキッチンは完全会員制で展開されており、店舗の情報は非公開だ。カップカレー以外にもスタンダードなカレー、カレー味のスイーツ、開発中の「飲むカレー」などを提供する予定で、“カレーを通じてコミュニティを作る”ことに挑戦していくという。また今後は、フードトラックでの販売も予告されている。販売効率だけなら、UberEATSのみで展開すればいい。あえてキッチンやトラックといった場を設けるのは、まさに顧客と6curryが互いの「顔」を知り、より密度の濃い関係をきずくためのものだと言える。実店舗への進出を狙うのは、小売ECだけではない。オリジナルのECサイトをつくれる『SHIBUYA BASE・公式サイトよりBASEは2012年にリリースされた、ECサイトを簡単に開設できるサービスだ。ウェブサービスに不慣れなユーザーも使いやすい点から口コミなどで支持を集め、今年9月に開設数60万ショップを新たにオープンしたSHIBUYA BASEでは、ショップオーナーが日程と商品ラインナップを考えるだけで、渋谷マルイ店での販売を経験できる。店舗運営に必要な什器・決済端末はもちろん、販促に必要なデジタルサイネージなども準備されており、1日あたりの出店料以外に費用は不要。数日間といった短期出店も可能だ。BASE社は同スペースの運営にあたり「小さなブランドのファンづくり」を掲げ、“5つのE”(Engagement、Empowerment、Experience、Exchange、Easy)を目指すとしている。実店舗の運営支援を通じて、オンラインとオフラインの垣根をなくした売買を実現すること、各ショップがブランドの魅力を伝え、ファンと友好な関係をつくることなどが目的だ。オンラインのプラットフォーム運営者が、このように各事業者のオフライン展開を支援していく形も、今後は増えていくだろう。顧客との関係性の構築をどれだけ応援できるかが、プラットフォーマーとして選ばれる一つの価値になっていくと予想される。EC事業者のリアル進出は、ようやく国内で本格化し始めたばかりだ。その目的は必ずしも、実店舗からの直接的な売上とは限らない。実店舗で認知してくれた顧客を新たにオンラインへ導くことはもちろん、オンラインでしか繋がっていなかった顧客とリアルで繋がり関係性を深めること、「体験」としての売買の場をつくることなど、さまざまな効果が期待できる。一方で海外に目を向けると、米国のAmazonが運営を開始した無人店舗『華やかさに目を惹かれるが、どちらの事例でも見るべきポイントは変わらない。「いかに顧客を満足させることができるか」に尽きる。日本でも政府がキャッシュレス化を進める姿勢を見せており、今後さらにオンラインの市場は拡大すると予想される。それは決して、「ECか実店舗か」という奪い合いを促す話ではない。必要なのは、オンラインとオフラインを融合させ、顧客にとっての「体験」の価値を最大化していくことだ。チャネルを超え、常に顧客との関係性を構築していくことが、これからの事業者には求められていくだろう。'83年生まれ。保育・幼児教育の出版社に10年勤め、’17に滋賀へ移住。フリーの編集者、Webマーケターとして活動を開始。保育・福祉をベースにしつつ、さまざまな領域での情報発信や、社会の課題を解決するためのテクノロジーの導入に取り組んでいる。関心のあるキーワードは、PR(Public Relations)、ストーリーテリング、家族。入場者の属性から、“ワクワク”の表情まで読み取る!名古屋グランパス戦での顔認証AI「顔パス®」実証実験レポート電子国家「エストニア」が予感させる可能性──“キャッシュレス先進国”に学ぶ、小売店の決済事情(3)よくわかる「IGTV」——これからの小売ビジネスを図解する(4)「サブスクリプション」の波は飲食にも。命運分ける“値付け”と“粗利”の考え方──小売&外食のデジタル戦略(5)音声認識技術とは?仕組みと小売ビジネスへの可能性を探る