オーディン ロキ トール
オーディンはロキと巨人の間に生まれた狼“フェンリル”に飲み込まれ、トールもロキから生まれた大蛇“ヨルムンガンド”の毒に倒れます。 激しい戦いが続くうち、巨人スルトの放った炎の剣は神々や巨人をはじめ、世界中のあらゆるものを燃やしつくします。 正妻フリッグとの間に産まれた光の神。ロキにはめられて殺されます。 ヴィーザル. 映画や漫画、アニメにおいてモチーフにされることも多い“北欧神話”。個性豊かな神々から、おおまかなあらすじまでを紹介します!日本をはじめ、世界各国に存在する“神話”。そのひとつ、ノルウェーやスウェーデン、デンマーク、アイスランド及びフェロー諸島といった北欧の国々に伝わるTuesday/Try’s day/戦いの神チュール(天空の神チュールなど、諸説あり)の日また、近年では今回はそんな北欧神話のあらすじや、登場する神々を紹介します。(神々やエピソードには諸説あります) 北欧神話によれば、世界には当初、燃え上がる氷塊と絡みつく炎しかなかったといいます。やがて氷塊の解けた雫の中に、巨人“ユミル”が生まれます。ユミルは別の氷から同じように生まれた雌牛の乳を飲んで大きく成長し、巨人族の子や孫を増やします。いわば、ユミルはすべての巨人族の先祖です。ユミルを育てた雌牛もまた、塩辛い氷塊を舐めて成長。やがて雌牛が生んだ神“ブーリ”は、アース神族と呼ばれる神々の祖先となります。さらにブーリの息子、“ボル”は巨人族の娘と結婚。3人の子宝に恵まれます。オーディン、ヴィリ、ヴェーと名付けられた彼らは、暴虐の限りをつくす巨人族に不満を持ち、すべての巨人の始祖であるユミルを殺害します。3人は、神々が世界を作るのにユミルが障害となることを見越していたのです。ユミルの傷口からはおびただしい血が流れ、あたり一面は血の大洪水に見舞われます。巨人族は一組の男女を残して溺れ死にます。そして、ユミルの肉塊からは大地を、彼のこわれていない骨からは山脈を作りました。歯とあごと、こなごなになった骨のかけらからは、岩や玉石や小石を作りました。『北欧神話物語 新版』よりその後もオーディンたちはユミルの頭蓋骨を大地の上に置いて天空を、脳から雲を作ります。南から飛んでくる火花を星に、その中でも特に大きいものが太陽と月になり、世界には昼と夜ができました。また、オーディンたちは海辺で拾った二本の木から人間の男女を、そして彼らが住む人間の国、“ミッドガルド”を作り出しました。ミッドガルドは巨人からの攻撃を受けないよう海で囲まれ、ユミルのまつ毛で作られた柵が張り巡らされています。オーディンたちは自分たちアース神族が暮らす領域“アスガルド”を天上に作り、生き残った巨人族を海で隔てた彼方に追いやります。後に、北欧神話が広まった北欧は、冬は豪雪に閉ざされるような、厳しい自然と共存することを強いられた地域。そんな環境だったからこそ、氷塊と激しい炎しか存在しなかった世界や、巨人の流した血により起きた大洪水といった、過酷な自然現象が描かれたのでしょう。 北欧神話に登場する神々は、どこか人間らしい面を見せることもあります。数多くいる神々の中から、主要な登場人物を紹介します。 世界創造という大きな功績を果たした神、そんなオーディンが目をつけたのは、巨人の国へ伸びた大樹・ユグドラシルの根元にあるミーミルの泉でした。この泉の水を、口にするだけで優れた知恵や知識が授けられるという噂があったのです。しかし泉を守る賢い巨人ミーミルは、オーディンに、泉の水を飲む対価として片方の目を差し出すように言います。オーディンは一瞬ひるむも、知識を得るためには安いものだと覚悟を決め、片目を差し出して泉の水を飲みます。その瞬間、オーディンの頭は膨大な知識で満たされるのでした。片目と引き換えに知識を得たオーディンは、やがて「いつの日かアース神族は巨人族と戦い、世界とともに滅ぼされる運命にある」ことを予言します。滅びの日を回避できないと知った神々は、自らの運命を受け入れて戦への備えを始めます。オーディンもばらばらだった神々を組織化して協力体制を築いたり、戦力の増強を目的に勇敢な人間を集めたりと、戦の準備に余念がありませんでした。また、ファンタジー作品がお好きな方ならば、神と聞くと、最初から優れた力や知識を持っている存在だと思うかもしれません。しかし、 オーディンを父に持つ、トールは一度ミョルニルを巨人のスリュムに盗まれてしまったことがあります。スリュムはミョルニルを返す条件として「美の女神フレイヤと結婚させること」を要求しますが、フレイヤは「巨人の妻になんかなりたくない」と大激怒。ミョルニルが無ければトールの本来の強さは発揮できないため、戦って取り戻すこともできません。けれどもこのままではミョルニルが奪われたまま……という状況に神々は頭を抱えます。すると、の門の外でいつもみはりをしている、ヘイムダルという神さまがいいました。『はじめての北欧神話』よりトールがフレイヤのふりをしていることに気づかないスリュムは、浮かれたまま結婚式を挙げます。運ばれてきたご馳走をあっという間にたいらげ、酒をがぶがぶ飲んだトールにスリュムは驚きますが、侍女に化けた神、“ロキ”が咄嗟にスリュムにとって、花嫁の清めの儀式としてミョルニルをトールの膝に置いたのが運の尽き。ミョルニルを取り戻したトールは花嫁衣装を脱ぎ捨て、その場で大暴れします。調子に乗っていたスリュムを一撃で殺害したばかりか、結婚式に参列していた巨人を1人残らず叩きのめしたトール。アース神族最強の戦士であるトールを敵に回した時点で、スリュムの負けは決まっていたのかもしれません。 ロキは悪知恵に長けており、彼の悪戯によって多くの神々は迷惑を被りました。しかしその一方で、要領良く立ち回ったロキのおかげで、神々に利益がもたらされたことも少なくありません。ある日、ロキはトールの妻であるシフが眠っているうちにシフ自慢の美しい金髪を全て切ってしまいます。ロキにとってはほんの悪戯でしたが、トールは「こんな悪戯をして許されると思っているのか!お前の骨を1本残らず折ってやる!」とロキに掴みかかります。ロキは「必ずシフの髪を元通りにするから、許してくれ」と泣き出し、ものづくりに長けた小人族に相談することを提案。一時的にトールから許してもらったロキは、小人族のイバルジのもとを訪れます。イバルジの息子は、シフの髪だけでなく、その他にも、投げれば必ず的に当たる槍、“グングニル”、神々全員が乗れるほど大きく、折りたたむと手のひらサイズになる魔法の船を作り出します。「これでトールも許してくれるはずだ」と調子づいたロキは、ただの気まぐれからその場を通りかかった小人の職人ブロックとシンドリに対し、「あいつらよりも立派なものを作ったら、俺の頭をやってもいい」と挑発。ロキが売った喧嘩を買ったブロックとシンドリは、すぐさま神々に献上する品を作ろうと働き始めます。ロキはしんけんにはたらく小人たちをみて、これはこまったことになった、と思いました。イバルジのむすこたちより、いいものをつくられては、おれの頭があぶなくなっちまう。よし、こいつらのじゃまをしてやろう……『はじめての北欧神話』より自分からちょっかいを出しておきながら、戦局が悪くなるや否や邪魔をするのが、ロキのずる賢いところ。ロキはアブに変身し、ブロックを刺して妨害したせいで最後に作っていたハンマーは柄が短くなってしまうのでした。ロキの妨害はあったものの、ブロックとシンドリは金色の毛並みを持つイノシシと9日ごとに黄金の腕輪を生み出す魔法の腕輪、そして後にトールの武器となる“ミョルニル”を作り出します。ロキの予想と反し、神々は「巨人と戦ううえでミョルニルが最も優れたものだ」という理由から、ブロックとシンドリを勝者とします。ここで、負けを認めて素直に頭をくれてやるロキではありません。「くれてやってもいいが、首を少しでも傷つけちゃいけないぜ。だって俺は首を賭けるなんて一言も言ってないんだからな」と屁理屈をこねるロキの口を、ブロックは革紐でぎゅっと縫い合わせてしまうのでした。すぐさまロキはその革紐を解きますが、ロキの口元は醜く歪んだまま治らなかった……という結末を迎えます。 ロキは一部の神々から「神々と人間の恥」と批判される一方、悪戯好きなだけではなく賢いことは認められていました。しかし、ロキはついに神々を敵に回すほどの悪戯をしでかします。ある日、オーディンの息子、バルデルは自分が死ぬ悪夢に悩まされます。これを心配した母フリッグは世界中の生物に対し「バルデルを傷つけない」と誓わせます。それは火や木、石も例外ではありませんでした。かくしてフリッグは、何にも傷つけられない存在となります。それを知った神々は、バルデルに石や槍を投げつけるという、危険極まりない遊戯に興じます。普通ならば大怪我どころか命すら危うい遊びですが、バルデルにとっては痛くも痒くもありません。その様子をつまらなそうに見ていたのは、あの悪戯好きのロキでした。バルデルが多くの神から愛され、誰もが羨む美貌を持つだけでなく、決して傷つくことのない身となったことが面白くなかったのです。バルデルの弱点を探ろうと、ロキは老婆に化けてフリッグに近づきます。相手がロキだと気づかないフリッグは、老婆との世間話の中で「バルデルを傷つけないようさまざまなものに誓わせたが、バルデルの兄弟のホッドは、盲目だったので、遊びには加わらないで、みなの輪の外にしょんぼりと立っていました。『神々のとどろき –北欧神話-』より神々の輪に入れなかったホッドはロキにそそのかされ、ヤドリギの木をバルデルに投げつけます。バルデルを生き返らせてもらおうと、神々は死の国の女王“ヘル”に懇願。訴えを聞いたヘルは、バルデルを生き返らせるための条件を提示します。「バルデルがそんなに愛されているかどうかは、ためしてみなくてはわかりません。もし、死んでる者も生きている者も、この世のすべての者が、彼のために泣いているのなら、彼はアスガルドの神々のもとに帰してあげましょう。しかし、ただの一人でも彼を愛さず、彼のために泣くことをしない者があったら、バルデルはわたしのもとにとどまるのです。」『神々のとどろき –北欧神話-』よりバルデルを愛していた神々は、世界中に使いを出し、バルデルのために泣くよう頼みます。世界中の生きとし生けるものがバルデルを思って涙を流すなか、ある老婆は知らん顔をしていました。「わしはバルデルのために涙をこぼすことはしないだよ。わしはあの神は好かないでな。ヘルには、いまつかまえているものを、いつまでも、もっていさせるがいいだ––いつまでもな。」『神々のとどろき –北欧神話-』より老婆が泣かなかったことから、バルデルが生き返ることは叶いませんでした。 バルデルを死に追いやったうえ、生き返るのを邪魔したロキ。当然ながら神々の怒りをかうこととなります。逃げ回るもついにトールに捕まり、罰を与えられたロキ。それは地上ではバルデルの死をきっかけに、美しく、純粋なものが消え、暴力や悪がはびこります。やがて負の感情に包まれた大地はひび割れ、ロキが捕縛から解き放たれます。神々への復讐を果たすため、巨人族を率いて戦を挑むロキ。オーディンはロキと巨人の間に生まれた狼“フェンリル”に飲み込まれ、トールもロキから生まれた大蛇“ヨルムンガンド”の毒に倒れます。再び無となった世界でしたが、やがて海に沈んだ大地が浮かび上がります。そこは穀物が生い茂る美しい場所となっていました。死の国から舞い戻ったバルデルやラグナロクを生き延びたトールの息子、“モージ”と“マグニ”が、かつてあったアース神族が暮らす領域を思って懐かしむ場面で北欧神話は幕を閉じます。(結末については諸説あり) 知的探究心を持つあまり、自身を省みないオーディンや、力づくで物事を解決しようとするトール、悪戯好きで厄介な問題を引き起こすロキ。そんな人間らしさが垣間見える神々が活躍する北欧神話は、滅びの美学を描いた物語でもあります。巨人に盗まれた武器を取り戻すため、勇ましいトールが女装するはめになったというようなユニークなエピソードも登場する反面、世界が滅びることを受け容れたまま生きていく、 この記事が気に入ったら書籍の映画化などが決定すると、原作ファンの中でたびたび話題になる“改題”。今回は、大ヒットした有名映画の原作となった文学作品のタイトルとあらすじから、改題後の作品名を当てていただくクイズを作りました! 2019年9月に東京・日本橋にオープンした「誠品生活日本橋」は、台湾発のカルチャーが存分に体験できる複合型ショップです。誠品生活日本橋の中心となっている「誠品書店」について、その選書を中心にお話をお聞きしました。「弁証法」や「アウフヘーベン」といった哲学用語の基礎知識をおさらいするとともに、近代小説の雛形を作った「教養小説」の中でそれらの要素がどのように取り入れられているのか、現代小説との比較も交えて解説します!現代人よ、もっと詩を読め!P+D文学講座第一回となるこの講義では、近代詩の楽しみ方について「スポーツ」との関係から探ります!居心地の良い空間で読書をすると、リフレッシュできるものです。本好きにはたまらない、雰囲気あるお店がたくさん。お店ごとの特色もさまざまな、都内にあるブックカフェを紹介します。フィクションの世界では、まっすぐに正義を追求するヒーローよりも、屈折した内面を抱えたアンチ・ヒーローの方に人気が集まることもしばしばです。アンチ・ヒーローたちの系譜を遡ると、世界文学史上の大傑作にその原型を見いだすことができます。その魅力、その正体を、文学の歴史とともに紐解いてみましょう。2020年の本屋大賞受賞作が発表され、凪良ゆう『流浪の月』の受賞に決定! 編集部では、事前に全ノミネート作品のあらすじ付きレビューと受賞予想を実施しました。記事を振り返ってみましょう!誰もが一度は耳にしているであろう、有名童話。実は時代とともに残酷・卑猥な表現がカットされているほか、ハッピーエンドへ改編されているのをご存知ですか?そんな童話の変遷をご紹介します。芸能スキャンダルから政治ニュースに至るまで、2016年の主要なニュースを「短歌」の形式で振り返ります!官能小説の“華”といえばベッドシーン! 究極の官能を目指すべく、20代・30代・40代の素人が書いた「濡れ場」を、鬼才・団鬼六氏の担当編集も務めたベテラン編集者に添削してもらいました。ライトノベル(=ラノベ)という書籍ジャンルは、ファンタジーやSF、あるいは若者向け小説から始まり、独特の世界を形成し、若者に今も絶大な支持を得ています。そんなラノベには、実は他ジャンルと違った、ラノベならではの約束事や、言葉の使い方があります。今回は、具体的な例をあげながらラノベのルールと文法をご紹介し、ラノベとは何かを考えてみたいと思います。「落語」と聞いて「敷居が高そう」と思っていませんか?本当は、もっとカジュアルに楽しむべき大衆芸能なんです!そんな落語の魅力について、人気ブロガー「かるび」さんが語ります。恋愛事件から盗作、さらには殺人に至るまで……明治から昭和にかけての、時代を代表する作家たちのスキャンダル報道を通じて見えてくるのは「ゲスの極み」の文学史!P+D MAGAZINE編集部が書いたベッドシーンを、「官能の生き証人」こと松村先生が添削する企画後編。30代、40代の素人が「お尻フェチ」「初恋」をテーマに書いた濡れ場に対し、松村先生の容赦ない辛口コメントが飛び出します!年に1度、「新刊を取り扱う書店で働くすべての人」の投票によって、“いちばん売りたい本”が決定する本屋大賞。2018年大賞には辻村深月さんの『かがみの孤城』が見事選ばれました。P+D MAGAZINEでは大賞の発表前にノミネート10作品から受賞作品を予想!候補作のあらすじ紹介やレビューをあらためて振り返ってみましょう。日本の現代文学の登場人物には、ダメなのになぜか憎めない、名キャラクターが多数存在します。今回は、そんな文学作品の中の“ダメ主人公”についてプレゼンし、その“愛すべきダメ人間”度を競う企画、「ダメ人間ビブリオバトル」を開催。果たして、栄えあるダメ人間王に決定するのは!?5・7・5・7・7のリズムで、季語を必要としない短詩である“短歌”。つくった短歌がTwitterを中心に大きな注目を浴びた編集者・歌人のまほぴさんに短歌をつくるための方法や心構えをお聞きしました。又吉直樹との共著『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』の作者であるせきしろさんに、「自由律俳句」の魅力やその作り方についてインタビュー。おすすめの句集も教えていただきました!「絶対に○○しないでください」と言われたら、ついやってしまいたくなる。そんな心理現象を指す「カリギュラ効果」の由来とともに、日常生活で活用するための方法に迫ります。本屋大賞に設立時から関わっている三省堂書店営業企画室の内田さんへのインタビュー!本屋大賞の運営側にいるからこそ知っている裏話から、表には出ていない熱い情熱まで。「本屋大賞」という大イベントを100倍楽しめる情報をお届けします。Facebookページへいいね、Twitterをフォローすることで、P+D MAGAZINEの最新記事をSNSでお届けします。